実力社会の弊害
(第2章後半から第3章あたり)
 ロスロリーアンには様々な幹部がいます。トップの地位にあって何を考えているのかわからない黒ランスロット、それに付き従うバーゼルフォンとヴァラック、侵略された土地の王族の身でありながら所属をしているアンドラス、将来のアカデミーの幹部候補生と思われるオズとオズマ。さらには限りなく黒に近い無法者コンビであるマルティムとバルバス。というメンバーです。影では明らかに反対に近いアンドラスを始め、欲望に忠実しすぎて上のいうことを気書かないマルティムとバルバスは本来であれば、暗黒騎士団の中に入れるべきではない存在と思いますが、黒ランスロットはあえてこの二人を入れています。
 たしかにこの3人の実力というのはものすごいものがある(無法者コンビはそれぞれ一騎打ちでセノビアの騎士を破っている)のですが、信条的・人格的に見れば明らかにロスロリーアンの一員というのには難があります。黒ランスロットは実力を見ていれているのだと思いますが、結果的にそれが最終的には大きな仇になって黒ランスロットたちに帰ってきます。この段階で亀裂が走っていたろロスリーマンは完全崩壊。かろうじて逃げ残った3人だけしか生き残らないという悲惨な結果になってしまいます。
 今の社会というのもこの実力主義というのは大きな幅を効かせていて、実力がないものはされと会社側が言い出している感じがします。その代償はどうなるのかといえば明らかで、全体的な人材不足だと会社が思い込んでしまう状況になっています。一部の企業にとって悪夢状態になっているのはそのトップが実力に見合っていなかったという現状で、開業以来の大危機にたっている企業や、数代前から続いていたことは全く出来ていない状況に追い込まれたり、最悪の場合はそれが積もり積もって結局企業ごとなくなってしまうという状況も出てきています。あるコンビニチェーンの社長がそうで、昔は経済史などに若社長と言われていましたが、やることなすことがすべてうまく行っていない状態(しかも施策も……が付くものだったりする)で、いまでは提携企業すべてから見放されてしまうのではと報道されてしまっています。
 もっと問題になるのは人を見る目がない人間が上にたった時です。こういう喩え話が新聞に載っていましたので、紹介したいと思います。ある銀行にリストラ担当で新しい支店長が派遣されてきたました。その支店長が一番最初に目をつけたのが、何もしてなさそうな年配の人。その人を切ったのですが、その直後から売上は激減という状況になりました。この人見た目は仕事してなさそうなのですが、この人をしたって地元の焦点やら向上やらの融資などの窓口になっていたので、実はその地域では一番の力を持っていた人だったのです。結局立ちいかなくなってしまいその銀行の支店は閉鎖。営業所に格下げという事態になってしまいました。
 こういう話を聞くたびに思うのですが、日本という風土には実力社会というの合わない場面というのは大きく存在すると思いますし、出る杭は打ちまくって先っぽが見えなくなっても打ちまくって結局その周辺にはなにも生えなくなってしまうという矛盾を平気でしてしまうようなときに、実力だと言っても通じない部分があると思います。例を上げればたくさんあります。2011年の正月の時のおせち騒動もそうですし、それに文句をつけた野球チームを買おうとした社長もそうです。妙なとところで孔子の思想が生きていて、妙なところで嫉妬というものが生きているような社会であれば、実力でのし上がったとしても叩かれる状況になってしまいます。もちろん笑えないぐらい不的確な人間がトップに居る場合は、しゃれにならない(会社のアイデンティティを無くしてしまった経営方針を取る社長は結構いる)わけですが、実力があるからと言っても人の上に立つ能力とは違うわけで、そのあたりを履き違えている人事や経営者はたくさんいると思います。
 タクティクスオウガの世界でそれに当たるのはバルバスでしょう。彼自身の能力が文句なく高いのですが、素行が悪すぎて処刑寸前のところランスロットに拾われたとあります。たしかに実力だけ見ればそうなのでしょうが、やっていることは粗暴すぎて、結局それが大きな足を引っ張る結果になってしまいます。結果的に欲望を出した瞬間に、ロスロリーアン崩壊&自分の死というのが付いてしまいました。もっとも黒ランスロットは外伝の都合上その正体を知っている上に、それをバルバスたちが扱えないというのも分かっているようで、絡めて考えるといくら教皇の命令でそれがあったとはいえ、乗り気ではなかったような気がするのですが。
 実力優先主義の結果会社が壊れるというのはよくある話ですし、スポーツ界の場合は実力よりも戦術に合うべき人間というのがあると思います。サッカーの戦術で戦術で個人名が上がることがあるのですが、どうもそれはチームの崩壊フラグのような気がします。マラドーナ一人で潤っと時代もありましたが、今や戦術のほうがかなり重視されている時代なので、逆にメッシのような存在のほうが稀と思ったほうがいいでしょう。どんなに能力が高くとも、チームに合わなければ崩壊するというのはどこのチームでも起こりうることですし。
 しかし現実は実力中心主義に傾いています。その結果どうなるかは、今の日本の産業構造の空洞化を見れば明らかだと思います。結局人材さえも海外に求めていってしまうわけですから出業率も増えます。今日本の出業率は5%前後ですが、実際のところはその倍はあると言われていますし、もっと増えるの確実だと思います。頭脳の流出も始まっています。(大学を東大ではなく、海外の有名大に求めるとか)実力優先主義というのはどう考えても日本のような和を考えるような国家には合わないような気がします。
 最も今の日本の政治的に言えば自分で実力があると思い込んでいる人間がトップに立っている状況では、実力主義といったて「何かの食べ物」ですかといわれても、反論できそうにないと思うのですが。

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